アメリカにおけるプライベートブランド市場動向:大手小売店のPB商品戦略

末永 恵

アメリカにおけるプライベートブランド市場動向:大手小売店のPB商品戦略

プライベートブランド(PB商品)とは?ナショナルブランドとの違い

プライベートブランド(PB)とは、スーパーマーケットやホームセンターなどの小売店が独自に商品開発を行い、自社で販売している商品を指します。これらの商品は小売店が自ら企画、マーケティング、製造し、他のメーカー製品に比べて比較的低価格で提供されることが一般的です。
日本で有名なプライベートブランドの例としては、セブン&アイ・ホールディングスの「セブンプレミアム」やイオングループの「トップバリュ」が挙げられます。日本では”プライベートブランド(PB商品)”と呼ばれることが多いですが、英語では “Private Label(プライベートレーベル)” または “Store Brand(ストアブランド)” と呼ばれるのが一般的です。これらの用語はアメリカの小売業界でも広く使用されています。
PB商品の最大の特長は、品質はナショナルブランドに劣らないのに安価であることです。一方で、とにかく安価に売ることが目的なのでパッケージデザインは質素である場合が多く、積極的なマーケティングや購入特典などの販促プロモーションはあまり行われないことも一般的です。プライベートブランドの商品は、小売店側がよく売れる商品を見極め、自社で開発、低価格で提供することにより他店との差別化や売上の向上を図る狙いがあります。

 

PB商品はどのように作られるのか?

現在ではアメリカの多くの大手小売チェーン店が、価格だけでなく独自性や高品質・高性能にこだわったプレミアム商品を提供しています。各リテーラーは単にモノを販売するだけでなく、自社の名前やオリジナルネームを付けた商品を企画開発し、品ぞろえの充実とブランディングに力を注いでいます。では、PB商品はどのように作られるのでしょうか?

商品開発にあたっては原材料の選定からサプライチェーンの管理、パッケージやラベルデザイン、最終的な完成品に至るまで、あらゆる工程で高い品質基準が求められます。この高い基準を満たすために、小売店と提携して製品を供給する製造会社は数百のカテゴリーで数千社にのぼるとされます。代表的な製造パターンを紹介します。

  1. 大手ナショナルブランドメーカーがその専門知識と工場の生産能力を活用してストアブランドを製造・供給するパターン。いわゆるOEM(Original Equipment Manufacturer)と呼ばれる形態です。
  2. 小規模な製造会社が請け負って生産するパターン。こちらもOEMに該当します。
  3. 小売店が自社工場を保有し、自ら製造を行うパターン。

これらの手法を通じて、PB商品は高品質でありながら競争力のある価格を実現し、店舗側に供給がされています。

 

代表的なアメリカ大手小売店のプライベートブランド

それではここで、アメリカの代表的な大手小売店とそのプライベートブランド名を挙げてみましょう。

  • Walmart: Great Value, Equate, bettergoods
  • Target: Up & Up, Good & Gather, Archer Farms
  • Costco: Kirkland Signature
  • Amazon: Amazon Basics, Happy Belly, Solimo
  • Kroger: Simple Truth, Private Selection
  • Albertsons/Safeway: Signature Select, O Organics
  • Trader Joe’s: Trader Joe’s
  • Aldi: Simply Nature, Clancy’s
  • Whole Foods Market: 365 by Whole Foods Market
  • CVS: CVS Health, Gold Emblem
  • Walgreens: Nice!, Walgreens Brand
  • Home Depot: HDX, Husky
  • Lowe’s: Kobalt, Project Source
  • Sam’s Club: Member’s Mark
  • BJ’s Wholesale Club: Berkley Jensen, Wellsley Farms
  • Publix: Publix Premium, GreenWise Market
  • Meijer: Meijer Brand, True Goodness
  • Rite Aid: Rite Aid Brand
  • Bed Bath & Beyond: Bee & Willow, Simply Essentials
  • Best Buy: Insignia, Rocketfish
  • Macy’s: Charter Club, INC International Concepts
  • Nordstrom: BP., Halogen
  • Wegmans: Wegmans Brand, Food You Feel Good About
  • Dollar General: Clover Valley, DG Home
  • Family Dollar: Family Gourmet, Family Wellness

アメリカではALDI(アルディ)が全米ナンバーワンのプライベートブランド小売チェーンで、ALDIのPB商品は総販売量の80%を占めており圧倒的なシェアが際立っています。一方で、Kroger(クローガー)の「スマート・ウェイ」は最も急成長しているプライベートブランドで、Numeratorの調査によるとその販売ボリュームは前年比135%増を記録しています。

また、日本人にも人気の高いTrader Joe’sはPB商品の割合が69%に達し、ALDIに次ぐ第2位のシェアを誇ります。一般的にPB商品は価格優先で質素なパッケージデザインであることが多い中、Trader Joe’sはデザインにも力を入れ、独自のブランドイメージを構築しています。単なる小売店ではなく、ブランドとしての地位を確立したユニークな存在であると言えます。

 

プライベートブランドの市場動向

アメリカにおけるプライベートブランド市場動向:大手小売店のPB商品戦略

調査会社Circana LLCによると、食品・飲料のプライベートブランド市場シェアは2023年に約26%に達し、米国史上最高を記録しました。特に美容品、食料品、飲料、ホームケア商品の伸びが顕著に表れています。
この成長の背景には、品質の向上が挙げられます。イプソスの2024年8月の調査では、アメリカの成人の84%がプライベートブランド食品を「手頃な価格」と評価し、さらに多くの人が「有名ブランドと同等またはそれ以上の品質」と考えています。

アメリカにおけるプライベートブランド市場動向:大手小売店のPB商品戦略

もう一つの成長要因は、長引くインフレの影響による消費者行動の変化です。生活費を抑えたいと考える消費者が増加する中、多くの小売店はプライベートブランドのラインを強化し、新商品を次々に市場投入しています。これにより、アメリカの小売業界におけるPB商品の存在感はますます高まっています。