スーパーボウルのCMに見るアメリカの消費傾向
アメフトの祭典 スーパーボウル2024
カンザスシティ・チーフスの2年連続優勝で幕を閉じたアメリカNFLの最高峰、第58回スーパーボウル。今年はCBS局で放映されたほか、Paramount+、Nickelodeon、Univision、CBS Sports、NFL+などでストリーミング放映がされ、合わせると平均視聴者数は1億2340万人となり、過去最多の視聴者数を記録しました。
このほかにも、今話題のラスベガスの最新イベント施設“スフィア”がプロモーションに活用されたり、チーフスの選手でタイトエンドのトラヴィス・ケルシーが恋人で歌手のテイラー・スウィフトと家族を100万ドルのVIP席に招待したことなど、何かとニュースに事欠かないスーパーボウルでした。
30秒で10億円のCM料
海外のマーケティングに携わる機会のある方であれば、スーパーボウルの広告が非常に高額なのは有名な話です。2024年スーパーボウルのCM枠については昨年11月初旬にSold Outのニュースが出ていましたが、その広告費は30秒で平均700万ドル(約10億5千万円)だったとのことです。スーパーボウルのCM料は年々高騰しています。ちなみに、1960年代に開催された第1回スーパーボウルのCM料は30秒枠が37,500ドル(約560万円)で、CM料が初めて100万ドルを超えたのは1995年だったそうです。
これだけ高額のマーケティング費用を掛けるということで、企業側もこの1日のイベントで終わらせないために、毎年1月に入ると広告主各社のティザー広告が流れ始めます。普段は何かと嫌われ者の広告ですが、スーパーボウルに限っては広告を見るのも1つの楽しみとなっているため、各社趣向を凝らしたクオリティの高いCMを用意しこの一大イベントに臨みます。
今年はフード&ビバレッジ系のCMが最多
スーパーボウルの広告はアメリカにおける消費の傾向や、どんな業界・ビジネスがホットなのかを教えてくれます。例えば2022年はCrypto.com、Coinbase、FTXなど仮想通貨関連のCMが多く放映され、“Crypto Bowl”などと揶揄されました。しかしその後、ご存じのようにビットコインは暴落、FTXは破産し、フィンテック業界は低迷。と同時に、スーパーボウルからも姿を消しました。
今年のスーパーボウルはどうだったかと言うと、食料品やアルコール類を含む飲料品が業界カテゴリーとして最多を占めました。特にスナックやチョコレートを含むお菓子メーカーのCMが多く、プリングルス・ドリトス・オレオ・Reese’s・M&M’sチョコレートなどの老舗ブランドのほか、Drumstick・Nerds・Lindt.などがスーパーボウルに初出稿しました。
スーパーボウルのCMは“アメリカの経済動向を映す鏡”
スナック菓子やビールはもともとアメリカンフットボールなどのスポーツ観戦と親和性が高く、CMが多いことに特別な違和感はありません。しかし前述のフィンテック系や昨年は放映の多かったエンタテイメント系(映画やストリーミングサービスなど)の割合が減ったことは、消費者の関心の低下や需要の減少を表していると言えるでしょう。
またオレオUSのバイスプレジデント、Michelle Deignan氏は、スナック菓子の広告が多いのは“Lipstick Effect(リップスティック効果)”だと言います。リップスティック効果とは、経済が不透明な時期に“リップスティック”やお菓子のような、安価な商品への消費を増やす消費者心理のことです。現時点でアメリカの景気後退を示すようなデータは特に示されていませんが、不況に突入するのでは?という懸念はここ数年ずっと言われ続けており、この払しょくできないぼんやりとした不安感が、消費者の財布の紐を締めているのかもしれません。
日系企業のスーパーボウルCM
アメリカンフットボールの祭典、スーパーボウル。その広告費は30秒で700万ドル(約10億5千万円)となかなか気軽に出せる金額感ではありませんが、今年は3社の日本の会社がCMを放映しています。スーパーボウルは常連のトヨタ自動車、2年連続のアステラス製薬、そしてKawasakiが初登場しました。来年以降、もっともっと日系企業のCMをスーパーボウルで見かけるようになることを期待したいですね。