「今後の消費者動向に要注意」2023年アメリカ年末商戦
アメリカ人の3人に一人がホリデーショッピングを予定
アメリカにおいて、11~12月のホリデーシーズンは1年で最大のショッピングシーズン。ブラックフライデー、スモールビジネスサタデー、サイバーマンデーと次々にセールが開催され、だいたいクリスマス過ぎ頃まで続きます。
今年10月のデロイトの調査によると、このホリデーシーズンのアメリカ人1人当たりの予想消費額は平均1,652ドル(約24万8千円)、これは昨年の1,455ドル(約21万8千円)より多い額です。これだけを聞くと景気の良さそうな話ですが、この調査によると最大のセールであるブラックフライデーで買い物をする人は31%程度、しかも所得の高い層に主に牽引されている形で、全体的なお祭りムードというわけでなないようです。
https://www.insiderintelligence.com/content/31-of-us-internet-users-will-shop-this-black-friday
「ホリデーショッピングのために新しいクレジットカードを作る」アメリカ人のお財布事情
WalletHubによる別なホリデーショッピングのアンケート調査によると、出費にやや後ろ向きな消費者の傾向が見て取れます。いくつかポイントを抜粋してみましょう。
- 「インフレーションのためプレゼント交換を取りやめる」と3人に1人が回答
- 「プレゼントのアイデアを考えるのがもっともストレスフル」と35%が回答
- 「今年のサンタさんは去年より景気が良くないだろう」と50%が回答
- 「昨年のホリデーショッピングの支払いがまだ残っている」と1/4が回答
- 「ホリデーショッピングをするために新しいクレジットカードを作る」と1/5が回答
デロイトの調査と合わせると、消費する人は昨年より多めに消費するが(主に高所得層)、一般的には出費を抑える傾向があると言えるでしょう。インフレによる生活費の上昇、新しいカードを作らなければ買い物ができないなど、手元にお金がない苦しいお財布事情が見えます。
過去最多1兆ドルを突破したクレジットカード債務総額
ニューヨーク連銀によると、2023年第3四半期終了時点で、アメリカ人のクレジットカード負債総額が初めて1兆ドルを越え、1兆300億ドル(約148兆円)に達したと報告されました。
長引くインフレ、金利の上昇、学生ローンの支払い再開など家計を圧迫する要因が重なったことに加え、パンデミックの頃に政府から支給された給付金を使い切り、クレジットカードの支払いに回すお金がなくなっている人が多いと言われています。これは目先の生活だけでなく、大学教育・住宅購入・老後の生活などに充てる資金もないことを表しており、もっと長期的な視点で問題が出てくることが指摘されています。
ミレニアル世代の抱える学生ローン問題
特に学生ローンの支払い再開は広範囲にインパクトを与えています。先のニューヨーク連銀のレポートによると、ミレニアル世代、特に30~39歳はクレジットカード支払いの遅延率が高く、高額な学費ローンを抱える層と一致します。
アメリカの大学は授業料が高額なことで有名です。多くの学生は奨学金という名の学費ローンを組んで通いますが、卒業し、社会人をスタートする段階ですでに借金があるという状況が慢性化しており、社会問題となっています。現在、アメリカ全体での学生ローン債務は総額1兆7,000億ドル(約254兆円)を超えており、借り手の約7%が10万ドル以上の負債を背負っているそうです。パンデミック中に救済措置としておよそ3年間、支払いの繰り越しが認められてきましたが、今年の10月から支払い義務が再開となりました。年末商戦直前での学生ローン再開が、消費に大きな影響を与えることは間違いありません。
ウォルマートCFOによる警鐘
アメリカはもとより、まもなく世界的な景気後退に突入する…ということはここ数年ずっと言われ続けており、昨年の同じ時期も2023年はリセッションに入るだろうと予想されていました。今のところ、個人消費・GDP・失業率などを取ってみてもアメリカが本格的にリセッションに入る明確な根拠はありません。長く続いていたインフレも落ち着き始めています。
しかし先日、ウォルマートのCFO(最高財務責任者)ジョン・デビッド・レイニーがロイター通信に対し「消費者の動向について、以前よりもう少し注意深く見る必要がある。」と語ったことは、1つの不安要素として各ニュースに取り上げられました。アメリカ経済の約70%を占める個人消費。2024年がどうなっていくか、このホリデー商戦の結果が1つの判断材料となります。